男が一線を退くとき。そのとき妻は…。ノムさん・サッチーの場合
野村の哲学ノート④
もう俺は終わったのか――。男が長年勤めあげた職場を去り、一線から退く決断をするときは弱気になるものだ。対して女性は意外とあっけらかんとしている。現役引退を決意したノムさんが、サッチーこと故・野村沙知代さんからかけられた言葉とは。新刊『野村の哲学ノート「なんとかなるわよ」』から紹介しよう。
■川勝オーナーの口添えで2球団に移籍
ホークスをクビになったのは、女性問題が原因であって、プロ野球選手として失格の烙印を押されたわけではない。「人の噂も七十五日」ということわざもあるように、もしかしたら時間が経てば、どこかの球団から誘いがあるかもしれない。
私としては、プロ野球の世界に残ることをほとんど諦めながらも、心の片隅で一縷の望みを持っていたのも事実だ。そして、それが通じたのか、ロッテオリオンズに選手として声を掛けてもらって1年間、西武ライオンズに移籍して2年間プレーすることができたのである。
実は、私がこの2つの球団に移籍することになった裏側には、ホークスの川勝オーナーの存在があった。
「野村は野球の知識が豊富だし、現役としてもまだ使える。きっとチームのためにもなるから採ったほうがいい」
と、それぞれの球団のオーナーに口添えをしてくれたのだ。ホークスに在籍していたときだけではなく、辞めてもなお、川勝オーナーにはお世話になるばかりで、本当に頭が下がる思いだった。
結局、私は45歳まで現役生活を続けることができたのだが、引退を決意したきっかけとして、このようなことがあった。